– 背景 –
2022年くらいから業界全体が値上げしました。
保守費用の高騰は、単なる作業増加や請求姿勢の変化ではなく、
このような、社会全体の構造変化が背景にあります。
1. サブスクリプション経済の浸透による「保守=固定コスト」への移行
かつては買い切り型で済んでいたツールやテーマ・プラグイン・フォント・画像素材の多くが、いまではサブスクリプション型(月額・年額契約)へ移行しています。一方で、一部のテーマは買い切り型が残っているものの、サポートや更新には有償契約が必要なケースが増えています。
これにより、保守作業を担う側も「無料で使える範囲で対応する」ことが不可能になり、ライセンス維持のための実費が毎月(もしくは毎年)必ず発生する構造となりました。
また、支払いが継続前提である以上、費用がゼロのままで保守を続けることが業界全体で困難になっているのが実情です。
2. IT人材不足とスキル格差の拡大
社会全体でエンジニア・ディレクター・保守対応要員の不足が深刻化しており、とくに「保守だけを専門に対応できる中堅技術者」の数が極端に少ない状況になっています。
開発や制作と違って「成果が目に見えにくい」保守業務は軽視されやすく、実際は高度な技術を必要とする知識がないと、解決が困難です。そのため、請け負う人材の価格が相対的に上がっていることが、コスト高騰の大きな要因となっています。
また、実際、「解決が難しいエラーやバグを外部に依頼すると数万円~数十万円かかることもあり、多くの時間や人手も必要です。しかも、日本全体でエンジニア不足が進行しており、特に保守を専門に担える中堅人材は希少です。こうした要因が保守費用を押し上げています。
3. 物価・人件費・電気代の上昇(特にサーバー維持費)
2023年〜2025年にかけて続いた世界的なインフレ傾向により、サーバー費・管理パネル費・クラウドストレージなどのインフラコストが軒並み上昇しました。
加えて、円安・人件費上昇・電気料金の高騰などが複合的に影響し、インフレ・円安・電気代高騰などが重なり、過去数年で保守にかかる実費は大幅に上昇しました。とくに電気料金は10〜40%台の値上げが相次ぎ、インフラ維持コストは確実に増えています。
これらはすべて、保守費用の「外注コスト」に反映されるため、クライアント側にとっても見過ごせない上昇要因となっています。
4. サイバー攻撃の高度化とセキュリティ維持コストの増加
ランサムウェア・フィッシング・自動攻撃ボットなどによる中小企業サイトへの被害が近年急増しており、サイト保守においてもセキュリティ監視と対策が「標準装備」となってきています。
その結果、ファイアウォールの設定、SSL管理、脆弱性の検知など、従来よりも多段階の安全対策が必要となり、保守範囲そのものが拡張しています。
こうした社会全体のサイバーリスク拡大が、保守費用の上昇に直接的に影響しています。
また、ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」「書き込みコメント欄」に、海外BOTアカウント等の書き込みが毎日大量に来ており、その対処も日々のスパム書き込みやBOTアクセスへの対応も必要で、単体では小さな作業でも年間を通すと大きな負担となります。
5. 「結果が出ないと意味がない」価値観の逆転と「予防保守作業」の評価拡大
かつては「成果が出ないものにはお金を払わない」という意識が一般的でしたが、2020年代以降(特にコロナ禍以降から顕著に)は、「問題が起きてからでは遅い」というリスク認識が企業側に広まりつつあります。
これは社会全体が“予測できないトラブル”に対して敏感になっている裏返しでもあり、見えないうちに修正・予防されていた保守作業が評価対象に変わってきたことを意味します。
結果として、「トラブルが起きていない=保守が機能している」という理解が浸透し、予防的な作業も評価対象となる傾向が強まっています。その結果、従来よりも高額に見える費用設定が正当化されやすくなっています。
6. サービス提供元(海外含む)の価格改定と一括値上げ
多くのテーマ・プラグイン・クラウドサービス(例:Adobe, Cloudflare, Elementor, WP Rocket等)が、2024〜2025年にかけて、AdobeやCloudflareなど大手の海外サービスが相次いで価格改定を実施し、年間契約金額の引き上げや無料機能の有料化が進みました。円安による実質負担増も加わり、保守担当者が費用を吸収するのは困難になっています。
開発元が海外の場合、円安による実質負担増も影響しており、保守担当者がこれらをすべて吸収するのは現実的ではなくなっています。
7. AI検索・AI自動要約の普及により、情報精度・表示速度への要求が上昇
AI検索(Google SGE, ChatGPTなど)の普及により、ウェブサイトの構造・表示速度・メタ情報整備が検索結果や要約の品質に直結するようになりました。そのため、保守担当者には従来以上に高度な技術対応が求められています。
その結果、「表示されていればいい」ではなく「整備された構造で高速に出るか」が重視され、保守側に高度なスキルが求められる作業が増加しています。
まとめ
2025年のウェブサイト保守費用高騰は、サブスク化による固定コスト化、保守専門人材の不足とスキル格差、インフレや電気代・円安の影響、サイバー攻撃増加によるセキュリティ強化、海外サービスの一括値上げ、そしてAI時代に求められる表示速度・精度向上など、複合的な社会情勢が背景です。単なる値上げではなく、必然的な構造変化といえます。
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